美容業界ではあまり馴染みがないので知らない方も多いかもしれませんが、
大阪に本社を構える、主に工業用のセンサーや測定器などを手掛ける会社です。
連結会社も合わせると社員数8000人を超える上場企業で、
社員の平均年収が2000万円を超えるという圧倒的な給与の高さで、大学生の就職先としても人気の会社です。
同じ業界の会社も多数ある中で、なぜキーエンスだけがそんなに高い給与を払うことができるのか?
なるべく美容業界に当てはめながら本を元に分析していきます。
圧倒的な付加価値思考
キーエンスの価値観の一つに、
「顧客の欲しいものは作らない」
というのがあります。
これは、お客様のニーズを満たさないということではなく、
「お客様が既に欲しいと思ってるものを提供しても付加価値にならない」
という考えかららしいです。
お客様が潜在的に求めていることを先回りして提供するからこそ
「付加価値」が生まれ、それが「差別化」と「高単価」に繋がる。
おそらく皆さんの普段の仕事においても、当たり前になりすぎてて
勝手に「こーゆーもんでしょ」って決めつけてしまってる業務がたくさんあると思います。
例えば、お客様からのカラーの要望で、「とにかく赤みを消して欲しいです!」っていう人いると思いますが、実はそういった人って髪質が硬く見えるのに悩みを持ってたりするので、カラーよりも髪質改善を提案してあげると喜んでもらえたり。
また、器具でも、今使ってるのと全く同じ機能でコードレスのドライヤーとかが発売されたらめちゃくちゃ売れそうじゃないですか?
コンセントの位置とか気にしなくていいですし、コードの断線とかも気にしなくて良くなるのでお店にとっても使い勝手いいと思います。
ただ、現実問題あのパワーをコードレスで実現するのは難しいからどこの会社も考えないのですが、
こういったアイデアを見つけてきて、それを商品化してしまうところがキーエンスの凄さです。
だから、高くても売れるし、高く売れるから、たくさん利益を残せる、
結果的に社員に給与をたくさん払える。
というのが1つ目のポイントです。
社員の営業力
2つめは、営業力の高さです。
キーエンスは、商談力を高めるための「ロープレ1000本ノック」というのを行なってるみたいです。
1日の外回りの営業が終わって戻ってくると、上司や先輩に対してロープレを行う。
というのをひたすら繰り返し行います。
そこで、より現場で聞かれそうな細かい質問を投げかけることで、商品の細かい知識や、
お客様からの質問に即座に返答できる対応力を身につけていきます。
さらに、ロープレの際には実際に商品の使い方まで説明していくので、
自社商品の扱い方も同時に覚えれるので、そういった理解度の高さという面でも
他社との差別化になっています。
さらに、営業成績が良い人を「あの人は営業が上手い」で終わらせないというのもキーエンスの特徴です。
「Aさんが受注を獲得した商談はこういう条件だった」というのを会社全体で共有して、
それを別の営業担当にもやってもらう。
そこで成果に繋がれば成功事例としてさらに共有し、
成功事例を積み上げていくことでより多くの社員が「営業が上手い」という風に育てていきます。
美容室の中でも、必ずリピート率が高いお客様の傾向があると思います。
住んでる場所、年齢、髪質の悩み、選択したメニュー、仕上がりのカラーの色など、
リピート率の高いお客様を一人一人分析して、そういったお客様に喜んでもらうにはどうすれば良いのか?
のカウンセリング提案をロープレで訓練すれば、新規よりも既存顧客の方が高いお店ができていくと思います。
評価制度
給与が高い会社のイメージでいくと、証券会社や不動産会社、保険会社などをイメージされることも多いと思います。
これらの会社に共通しているのは、「営業の成果が給与に直結する」という部分です。
個人が結果を出せばそれがそのまま歩合として給与になるので、証券会社や不動産会社でも2000万以上稼いでいる人はたくさんいます。
美容室のスタイリストさんもこれにあたる部分が大きいですね。
もちろん、個人として結果が出せなければ歩合も出ませんので、結果が出せない人は全く稼げません。
これが、キーエンスの場合は「結果主義ではなく、プロセス主義」と言われており、
良い結果が出ていなくても、良い結果が出そうなプロセスを踏んでいれば相応に評価されるようになっています。
その結果とプロセスの評価は半々くらいの割合らしいです。
さらに、業績賞与が年に4回あり、会社の成績によってその業績給も変わってきます。
いくら個人で結果を出そうが、正しいプロセスを踏まないといけないということと、
会社全体が儲かっていないと良い給料がもらえないということから、
みんなが積極的に個人の成功事例を社内で共有しようとします。
これがキーエンスの強みとなっています。
たまたまタイミングが良くて大きな受注をもらえたとしても、
それは会社にとって成功事例の蓄積とはなりません。
たまたま顧客になったインフルエンサーの人が拡散してくれて新規がたくさん来た
というスタイリストさんはあまり評価してもらえないという事ですね。
それよりも、正しい営業手法で、しっかりと営業をすることで、
どういうタイミングで受注に繋がったか、どういう商品から切り替えで導入になったか、
誰に商談すれば受注までのスピードが早いのか、という成功事例を積み上げることができ、
さらにそれを社内で共有することで多くの社員が受注をもらえるようになり、
結果的に会社が儲かり、給料も上がる、という仕組みです。
サロンさんでも個人の売上歩合以外に、会社の業績給というものを設ければ、
他のスタイリストさんへのヘルプも積極的に行えるようになるかもしれないですし、
後輩の面倒を見ない人も減り、さらには一人で仕事するよりも効率が良いということで独立者も減るのかもしれません。
time is money 時間の大切さ
最後は時間に対する考え方です。
キーエンスの社員は、当たり前のように皆さんハードワークで、
朝早くから夜遅くまでとにかくよく働いてるみたいです。
長時間働く会社というと、なんとなく上司が残っているから帰りずらくて、しょうがなくダラダラと事務作業してる。
という若手社員も多いと思いますが、キーエンスは時間に対してもシビアです。
「時間チャージ」と呼ばれる考え方で、会社の粗利と全社員の労働時間を割った金額で、
社員一人当たりが、1時間でどれだけの粗利を生み出したのか?
を数字で出しています。
社員みんなが1時間で生み出せる粗利金額を把握しているからこそ、
利益に結びつく行動を取るようになっています。
例えば、社員5人である作業をしないといけないとなった時に、それが3時間かかるとします。
仮に「一人当たりの時間チャージが1万円」だとすると、
5人で3時間なので その作業にかかる時間チャージが15万円 となります。
それだったら、外注した方が安いんじゃない?となれば、その作業は外注しなさい。
という風に、なるべく無駄な時間を使わないような仕組みになっています。
もちろん会議やミーティングでも同じ発想で、
特に何も生み出さない会議やミーティングを行なっていると、
その会議の主催者(トップの役職者)は「時間チャージの考えが足りていない人物」というレッテルを貼られることになります。
このように、自分の1時間あたりの価値を知ることによって、
自分がもらえる大体の給与計算ができるようになり、そのままモチベーションに直結します。
美容室の場合、メニュー料金を決める時などは10分1000円くらい、
という風な計算をされると思いますが、
お客様を対応していない時間にどんな価値を生み出せるか?
ということを考えないといけないのかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
なかなか美容師さんに置き換えて考えるのは無理があったかもしれません。
どちらかといえばディーラーさんの方がしっくりくる部分は多そうです。
ただ、利益を多く残そうと思うと、
・いかに付加価値を与えれるか?
・その付加価値を社員に還元できてるか?
という部分の両立が必要そうです。
今の時代、スタイリストの給料は30万もない、
でもオーナーはタワマン住んで外車乗り回してるってお店はどんどん人が離れて行ってます。
ちゃんと社員が稼げる仕組みを作っていきましょう!!