普段本を買う時は、twitterなどで面白そうな本を見つけて、amazonやメルカリで買ってます。
ただ、先日本屋さんで本を眺めてると、気になるタイトルの本があり、それが
「売上を、減らそう。」
でした。
タイトルと、帯に写ってた写真の女性が可愛くてついつい手に取ってみたら非常に面白そうだったので、
久しぶりにジャケ買いしました。
内容も、これまでのお店経営の考え方とは違い、なんとも『今風』な経営方法で面白かったので、美容室経営にも活かせるようかいつまんでシェアしていきたいと思います。
大まかなストーリー
簡単にどういう内容かというと、
元々普通の会社員をされていたご夫婦が、「将来自分のお店を持ちたい」という夢を叶えるために『佰食屋』という飲食店をオープンする。
旦那さんが作るのが得意だったステーキ丼をメインに、ランチと夜の通常の経営スタイルだった。
味にはこだわっていて自信もあったけど、なかなかお客様がきてくれない。
そういった状況の中、
1つのブログで急激にお客様が増えた。
その後もタウン誌の取材であったりテレビの取材などでお店は繁盛するようになり、行列もできるようになった。
売上も上がってきてはいたが、忙しくて疲弊している割にはそこまで給料は増やせていない。
そこで、夜の営業は完全にやめて、ランチ営業のみでメニューも3種類、それぞれ100食限定しか販売しない!というスタイルに切り替えた。
その経営手法が評価され、
「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」の大賞も受賞、
さらに「セブンルール」というテレビ番組や、NewsPicsなどでも取り上げられ、その経営スタイルにますます注目が集まっている。
といった感じです。
佰食屋が他社と圧倒的に違う3つの事
1日100食しか売らない
冒頭にも書いた通り、佰食屋は1日100食しか販売しない、尚且つメニューも3つだけでの展開をされています。
通常はお客さんが並んでるんだったら来てくれてる数だけたくさん売ればその分売上も上がるし、メニューを増やしたりトッピングなんかを増やしたりしてももっと売上は上げれそうだと考えると思います。
また、夜も空けてお酒を提供した方が経営的には儲かるんじゃないかとか売上を上げるためにできそうなことは山ほどあると思います。
そんな中で、この百食屋はどんなにお客様が来ようとも100食しか売らないと決めているところが圧倒的に違う点です。
原価率を上げて商品に徹底的にこだわる
通常の飲食店の原価率は大体30%〜40%程度らしいですが、この佰食屋の原価率は50%を超えてるらしいです。
使用しているお肉のランクや部位はもちろん、ソースに使う醤油やワインにもこだわりを持って材料を選んでいる。
さらに調理に関しても、毎日毎日お店で仕込みをすると言う風に、調理の仕方にまでこだわることによって、お客様に対して圧倒的なコストパフォーマンスを実現しています。
作る商品の基準はミシュラン掲載店と同じレベルになっているかどうからしく、主婦もされているオーナーが、
・自分でこれだけのお金を払って月に一回食べに来たいかどうか?
・家庭で再現できないクオリティか?
・大手チェーンに参入されにくいか?
・みんなのごちそうになっているか?
を客観的に判断してメニュー作りをしているため、多くの方に指示されるお店になっているのだと思います。
優秀な人材は採用しない
多くの企業が求めるようなやる気に満ち溢れて成長志向が高いような人材はもっと他の会社の方がいいよと言って採用しないらしいです。
採用の基準は、
「今いる従業員と合う人」
で、面接で1時間ほど話をしてどういう働き方をしたいかなどを聞いているそうです。
コミュニケーションが苦手な人や、障害を持った方やお年寄りまで、様々な方が働いているらしいのですが、
なぜ優秀な人材が必要ないか?というと、
・メニューも3つしかなく超単純で誰でも覚えることができる
・メニューを見せて指を指すだけで注文も取れる
・100食以上売るつもりがないから売上を上げるためにどうするか考えなくていい
・お店の前でビラ配りをしたりといった営業もない
という事から、逆にやる気があって売上を上げたい!!と考える人はお店には合わないという考え方。
他店と真逆の戦略によって生まれたメリット
1日100食しか売らない
まず、100食限定にすることでのメリットですが、
まず1つ目は、圧倒的にフードロスが少ない!!
毎日100食分の材料だけを仕入れてそれを売り切っているので捨てる材料が少ない為利益が残りやすい。
2つ目は、働く時間がとにかく短い!!
100食売り切れば営業終了なので、あとは片付けをして翌日の準備をして終了。
正社員の方でも朝9時に出勤して17時45分には帰れるみたいです。
もちろん残業はなしで週休2日。
夕方には仕事が終わってるので、その後副業してもいいし、ジムに行ったり趣味に当てることができる。
3つ目は、目標が明確な為、余裕を持って働ける!!
目標が明確ではなかったり、目標設定が高過ぎる場合、忙しくなってくると回転さすことばかりを考えるようになり、どうしても目の前のお客様のことが疎かになりがち。
100食売れば終わり!と明確な目標が決まっていて、ある程度目処が立っているのであれば、
余計なことは考えずに目の前のお客様に集中できるので、結果的にサービスの質が向上する。
原価率を上げて商品に徹底的にこだわる
通常のお店では考えられない原価率で、尚且つ調理方法にも手間暇かけている為、結果的に大手チェーンは参入できず、ライバルが少ないというところは大きいと思います。
さらに、圧倒的なコストパフォーマンスを実現していることによって、口コミやブログなどで宣伝してもらえるため、広告費が一切かかっていない!!
また、その口コミから火がついてテレビや雑誌の取材も多く来られるようになり、またそれでお客様が押し寄せるといういい循環が作られています。
優秀な人材は採用しない
仕事ができる優秀な人材は、仕事ができるからこそ、他の従業員にも「もっとこうして欲しい」とか「こうできないの?」とか軋轢を生みやすい。
何かにハンデを抱えている人達は、自分のできることをコツコツと頑張ってくれて、できないことは他の人たちで補い合うことでチームワークが生まれる。
また、同じ職場という身近な中にシングルマザーやおばあちゃんや障害を持った人たちがいることによって、
同じような境遇のお客様が来られた時への対応が非常に優しくなる。
例えば、小さいお子様が来店された時は、大人と同じ肉の大きさではなくて、細かくカットして提供してあげるようにするとか。
そういった細やかな接客ができるようになることで、AI時代でも十分勝ち残っていける強みが生まれている。
結果儲かるのか?
それぞれのメリットについてはご理解いただけたと思いますが、元々原価率も高く、売上の上限も決まっている中で、この会社は儲かってるのか?疑問だと思います。
本の中にも書いてありましたが、この佰食屋の目的は、
日々の生活を大切にできる持続可能な働き方
を実現するということで、そんなに儲けてやろう!!みたいな考え方ではないため、めっちゃは儲かってないらしいですが、毎年ちょっとずつ黒字らしいです。
オーナー自らの給料にも上限を決めて、月に一回美味しいご飯を食べにいけるとか、毎日家族揃って夕飯が食べられるとか、そういった事が従業員に一人でも多く実現できるようにするために会社を経営しているらしいので、
とびきり贅沢したいとか、お金持ちになりたいと考えてる人からすると儲かってないかもしれません。
ただ、人それぞれの価値観が多様化している今、特にお金よりも時間の価値が高まってきていると思います。
そこに価値を感じる人たちにとっては最高の職場環境になりそうですね。
美容室の場合
一応美容業界で働く人間として、美容業界でも応用可能か考えてみましたが、あっさりと答えが出ました。
既に北原さんがオーナーのDearsさんも現場はこういった働き方をされてます。
Dearsさんも、
・集客は会社が行う
・メニューはシンプルにセットメニューで打ち出す
・カウンセリングのマニュアルがあり、サービスに力を入れてる
・お客様がいなかったら帰る
といった形で実践されて100店舗以上展開されてます。
逆に個人店の場合でも、
・圧倒的な技術を武器に紹介客を増やす
・メニューをシンプルにセットメニューで打ち出す
・お客様一人一人、出す飲み物や使う商材を変えるなどパーソナルなおもてなしをする
・お客様がいなかったら帰る
といったことは可能です。
唯一、飲食業界と違ってフードロスのところが美容業界にはないため、チェーン店や他店に真似されやすいですが。
最近は独立志向が高い美容師さんばかりでは無くなってきていますし、ハサミを持ちたくないという美容師さんも増えてると思います。
そういった方達が、佰食屋のスタッフさんみたいに、得意なことろや苦手なところをカバーしあって、ゆとりを持って働けるお店がもっと増えればいいですね。